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コラム

交通事故で高次脳機能障害、障害厚生年金3級を受給できた事例

2022.02.05

今日は、交通事故で脳挫傷になり、高次脳機能障害と診断されるも、障害厚生年金3級を受給できた事例を紹介します。

この方は、大企業にお勤めの方。海外赴任中に交通事故に会い、脳挫傷になり、現地の病院に入院。当時は意識が朦朧状態であり、その後すぐ帰国し、日本の病院に再入院。手術やリハビリ治療を受ける。事故から1年6ケ月後の状態は、かなり回復してきており、日常生活ではそれほど問題ないレベルになったが、短期記憶が低下し、問題解決や効率的な行動が難しいなどの障害が残る。また強迫的な不安障害もあり。会社に復帰後は、頭をそれほど使わない業務に配置転換された。

ここで、高次脳機能障害とは何かについて解説していきます。「高次脳機能障害情報・支援センター」のHPから引用します。

高次脳機能障害とは、病気や外傷によって、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害が発生し、日常生活や社会生活に制約がでる状態」を言います。

原因としては、①脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などによるもの ②交通事故などにより外部からの衝撃でなるもの ③脳炎、脳腫瘍、水頭症、パーキンソン病などの病気が原因によるもの の3つが挙げられます。

症状としては、
A. 記憶障害
・物の置き場所を忘れる。新しい出来事を覚えられない。同じことを繰り返し質問する。
・人の名前や店の名前を覚えられない。待ち合わせをした約束時間を忘れてしまう。
・初めて知ることを覚えられない。同じ間違いを繰り返してしまう。

B. 注意障害
・ぼんやりしてミスが多い。ふたつの事を同時に行うと混乱する。
・作業を長く続けられない。
・単純なミスが多い。気が散る。雑音が入ると集中できない。

C. 遂行機能障害
・自分で計画を立てて物事を実行することができない。
・人に指示してもらわないと何もできない。
・約束の時間に間に合わない。
・臨機応変に対応できない。

D. 社会的行動障害
・興奮する。暴力をふるう。
・思い通りにならないと、大声を出す。
・自己中心的になる。怒りっぽい。
・ひとつのことにこだわる。
・人の気持ちを考えられない。

E. 失語症や失行症
・会話することが難しい。
・言い間違いをすることが多い。
・言葉の意味が分からなくなる。
・パッと言葉が出てこない。
・道具の使い方が分からなくなる。
・服を着られなくなる。
・ご飯の食べ方が分からなくなる。

この方の場合、相談を受けた時点で、障害認定日(事故日から1年6ケ月後)から既に5年ほど経過しておりました。そのため、診断書(精神の障害用)は、障害認定日から3ケ月以内のものと、請求日から3ケ月以前のものの2枚が必要となりました。

そして、海外での事故のため、受診状況等証明書は取得できないため、「受診状況等証明書が添付できない申立書」に病院での診療録のコピーと会社関係者の第三者証明を2つつけて頂きました。

認定日と請求日の症状は、ほとんど変わっておらず、高次脳機能障害にプラス、軽度の認知症たや抑うつ気分があり、薬物治療も継続しています。

審査の結果、障害厚生年金3級(年額約100万円)を受給することができました。

最後に、障害認定基準を記載しておきます。

3級:①認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
②認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの

「(5) 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活や社会生活に制約があるものが認定の対象になる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転もみられることから療養及び症状の経過を十分考慮する。  また、失語の障害については、本章第6節音声又は言語の障害の認定要領により認定する。」

「(6)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断する。」

以上、この方は、精神障害が残りつつも、社会復帰して仕事をこなされています。今後の症状の回復を願ってやみません。

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