最近、個人事業主の方から、社会保険の加入の依頼を受けることがあったのですが、個人事業の社会保険手続きはちょっと複雑になっています。
厚生年金保険法の第6条にはこう記載されています。
「第6条 次の各号のいずれかに該当する事業所若しくは事務所(以下単に「事業所」という。)又は船舶を適用事業所とする。
一 次に掲げる事業の事業所又は事務所であつて、常時五人以上の従業員を使用するもの
イ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
ロ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
ハ 鉱物の採掘又は採取の事業
ニ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
ホ 貨物又は旅客の運送の事業
ヘ 貨物積みおろしの事業
ト 焼却、清掃又はとヽ殺の事業
チ 物の販売又は配給の事業
リ 金融又は保険の事業
ヌ 物の保管又は賃貸の事業
ル 媒介周旋の事業
ヲ 集金、案内又は広告の事業
ワ 教育、研究又は調査の事業
カ 疾病の治療、助産その他医療の事業
ヨ 通信又は報道の事業
タ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める社会福祉事業及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に定める更生保護事業
二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの」
簡単に言うと、社会保険の強制適用事業所とは、
①製造、加工業、小売り販売業など(サービス業の一部を除く)の個人事業で常時5人以上の従業員を使用するもの
②法人の事業所で常時従業員を使用するもの
ここで問題となるのが、「常時5人以上」の定義になります。これは、労働基準法や労働安全衛生法などの労働関係法令とは意味が違います。結論から言うと、「厚生年金の加入要件を満たした、常時使用の従業員」のことを言います。
ですので、個人事業の場合は、正規労働者や週労働時間が30時間以上のパート労働者のことになります。週30時間未満のパート労働者は含みませんので、注意が必要です。
例えば、小売り業の個人事業主で、従業員を7人雇用しているとします。この7人が週20時間程度の勤務であれば、「常時5人以上使用」には該当しませんので、強制適用事業所にはなりません。このうち、4人が週30時間を超えて勤務するようになった場合でも強制適用事業所にはなりませんが、「任意適用事業所」になることができます。事業主の申請と、4人の内の2人以上の従業員の同意があれば、社会保険に加入することができます。この場合は、4人とも強制加入となります。
この場合の手続きですが、通常の強制適用事業所の場合、「新規適用届」「被保険者資格取得届」「被扶養者届」「口座振替申出書」「個人事業主の世帯全体の住民票」くらいで済みますが、任意適用事業所の場合、上記に加えて、「任意適用申請書」「個人事業主の所得税納税証明書」、「事業税納税証明書」、「市県民税の納税証明書」、「国民健康保険料納税証明書」、「国民年金保険料納税証明書」、「任意適用同意書」が必要になってきます。ですので、任意適用申請の場合は、強制適用事業所と比べて、事務負担が結構重くなっています。
従業員の福利厚生の向上と将来の老齢年金額の上乗せには寄与しますが、事業主にとっては、この社会保険料負担が重くなってくるのではないでしょうか?