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コラム

なぜ問題社員ほど会社を辞めないのか? 正しい退職勧奨の仕方とは?

2022.05.28

今回は、ちょっとシリアスなテーマです。中小企業にとって人材は非常に貴重であり、採用するもの難しい側面があります。ところが、良い人材だと思って採用したら、周りとトラブルを起こしたり、セクハラやパワハラをする人間だった、また能力が低く仕事ができない人だったといった問題が発生することがあります。

そうした場合、経営者としたらどう対処したらよいのでしょうか?

日本の労働法関係法令では、解雇は、懲戒処分になるほどの非違行為でないと簡単にはできません。労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と謳ってあります。これを「解雇権濫用法理」と言います。この条文は非常に抽象的で、実際に裁判になったときは、裁判官の判断により有効無効が分かれますが、経営者側に不利な条文であることに変わりありません。現在のところ、政府がこの解雇の要件を緩和する動きは全くありません。

この解雇をせずに、問題社員に辞めてもらう方法として、「退職勧奨」という方法があります。問題社員に対して、会社の状況や自身の業務遂行状況、人事評価の結果などを説明し、他の会社に転職するように勧めるもので、雇用契約を任意で解消することのお願いを会社側からすることになります。この退職勧奨に応じるかどうかは、労働者の自由意思になりますので、強制してはいけません。この時に条件として割増退職金(給料の2~3ケ月分)を提示することで、受け入れやすくなります。

よくやる間違いは、労働者からの「この退職勧奨を受け入れなかったらどうなるのですか?」という質問に対して、「解雇になると思うよ。」と回答してしまうことです。これでは解雇と同じになってしまいますので、言ってはいけません。あくまでも労働者側から退職した方が自分の将来のキャリア形成や自分にあった仕事を見つける方(転職)が得策と判断させることです。

ところで、問題社員は、なぜ会社を辞めないのでしょうか? 理由をいくつか考えてみます。

理由1: 今の会社の給料が比較的高い
同業他社や同世代の給料をネットなどの検索してみると、自分の会社の給料が平均より高く、転職しても給料が下がる恐れがあると判断している場合があります。そうすると、わざわざ転職をしようという気が起こらないでしょう。

理由2:現在の職場環境がよい➡仕事が楽だ!きつくない!
今の会社の仕事は、比較的仕事が軽く、快適であるため、現状を維持したいと考えることが通例かと思われます。

理由3:経済的問題を抱えている
現在住宅ローンを抱えている、子供が多く教育費がかかる。配偶者の年収が低い。高齢者の場合は、年金が少なく生活不安がある。

理由4:健康問題を抱えている
高血圧、糖尿病、心疾患、脳疾患などの基礎疾患の異常を抱えている人は、治療費もかかり退職はリスクを伴います。

理由5:特別の資格やスキルをもっていない
SEや看護師などの特別の資格を持っている人は、退職勧奨に応じやすくなります。退職しても次の会社が見つけやすいからです。

理由6:年齢が50歳以上である
これらの年代では、再就職が難しいため、特別な理由がない限り退職勧奨にはなかなか応じないでしょう。

理由7:「自分は会社に貢献している」と思っている
「私はしっかりと仕事をこなしています。」「上司が私をきちんと評価してくれない。」「私より能力の低い人はたくさんいます。」などという意見を言います。つまり自己を過大評価しており、会社の評価と乖離しているケースです。

以上のような理由で会社にとどまることを決断し、会社を辞めないことになると思われます。

しかし、仕事をする能力が低く会社に貢献しない人、職場でトラブルを起こし、組織に悪影響を及ぼす人は、経営者としては、直ぐにでも辞めてもらいたいと思っているはずです。

●退職勧奨前の事前準備

①対象者の選定と教育指導計画を作成し、本人に指導、覚醒を促します。

まず、辞めてもらいたい人の選定を行い、人事評価の確認を行います。その上で、どの職場でどのような能力を発揮してもらいたいかの教育指導計画を立案します。個人面接をし、内容を説明、この時に仕事の内容を客観的に見える化できるように「日報」を毎日書いてもらいます。上司のコメントも記載しフィードバックします。このとき、指導教育の実施記録を紙ベースで残しておきます。

②指導の効果が薄い又はほとんどない場合は、配置転換、降格、減給等の措置を講ずる。

教育指導の結果、日報が書けない、指導に反発する等の事態になった場合は、配置転換、降格、減給などの措置をとることを明言します。
それでも改善されない場合は、退職勧奨を行います。

●退職勧奨の実施

①退職勧奨の想定問答集を作成します。

労働者側は、面接の際に録音をしてくる場合があります。録音されてもよいように、失言を避け、解雇と受け取られないように慎重に言葉を選びましょう。

②退職勧奨の際は、「配置転換に応ずるか、退職するか」の二者択一で迫りましょう。

会社の厳しい状況や今後の方針、対象者の人事評価の内容、これまでの仕事ぶりの評価を説明し、「配置転換に応ずるか、退職するか」の二者択一を迫ります退職の場合は、割増退職金が出ることも説明します。

相手が配置転換を選択したら、その人事異動を行います。その後退職を申し出るケースもあります。退職の選択をした場合は、「退職合意書」に署名・押印してもらいます。

③相手に感謝と謝罪の言葉を述べる。

相手に恨みを持って退職してもらうことは、極力避けましょう。円満に退社したという印象を持ってもらうため、「会社の要請に応じてくれてありがとう」という感謝の言葉と、「いままで厳しい言葉を言ったかもしれないが申し訳ない」という謝罪の言葉を述べます。

④離職証明書(離職票)は、会社都合とし、解雇とは絶対にしないこと。

離職証明書の発行の際に、離職理由の欄で、解雇にチェックをいれてはいけません。あくまで、会社都合で退職勧奨とします。

⑤退職日までの給与と割増退職金を支払います。

退職日が決定したら、給与と割増退職金の振り込み手続きをします。退職日前に賞与支給日がくる場合は、賞与も支払いましょう。

問題社員が退職した後に、労働審判に訴えてくる場合があります。その目的は、「未払い残業代の請求」や「退職勧奨を解雇と捉えた解雇無効」を求めるもので、多額の金銭(解決金)を要求するものです。

このような事後のトラブルを起こさないためにも、慎重かつ入念に準備の上退職勧奨を行いましょう。

以上 参考にしてください。

 

 

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