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2018.11.29
現在、労働者と使用者との間のトラブルは年々増加しており、労働相談の件数は、毎年100万件を超えています。そこで、今回は、労働審判制度について解説します。
まず、労使トラブルを解決する手段として、都道府県労働局のあっせんによる紛争処理があります。これは時間や費用の点では訴訟に比べて負担が少ないのですが、最終的に当事者間の話し合いがまとまらないと解決しないため、実効性に欠けるという欠点があります。
又、訴訟を提起するとなると、数か月から1年以上かかり、証拠を調べるための裁判官の出張費用や書類の送付費用などを当事者が一時的に支払わなければならず、経済力のない労働者にとっては負担が重すぎるということになります。
そこで、訴訟より費用負担が少なく、あっせんよりも実効性の高い「労働審判」という制度が平成18年になって法律上確立しています。
労働審判制度とは、簡単に言うと、「個別労働関係民事紛争について、原則として3回以内の期日で、裁判官(労働裁判官)と労働関係における専門的な知識経験を有する者(労働審判員)から構成される労働審判委員会が審理を行い、調停による解決の見込みがある場合は、これを試みつつ、それによって解決がされない場合は、合議によって、当事者間の権利関係を踏まえて事件の内容に即した解決案を定める手続きである(労働審判法第1条)。」とされています。
上記の資料は、厚生労働省の資料からの抜粋です。全体像を分かりやすい形で図解しています。
その特徴としては、
①労働審判委員会の3回の審理により個別労働紛争の解決を図る迅速・簡便な手続きである。
②権利義務関係を踏まえて審判を下す。
③調停という当事者の合意を基礎とする調整的な解決方法が組み込まれている。
④審判に異議申し立てが行われると、通常訴訟に移行する。
という点が挙げられます。
ところで、労働審判のメリット、デメリットはどんなところにあるのでしょうか?
メリットとしては、
①短期間(3ケ月以内)での解決が見込める。
②話し合いがまとまらない場合は、審判という一定の判断が下される。
③訴訟に比べて申し立て手数料が安い。
④紛争の実態を踏まえた柔軟な解決が可能。
デメリットとしては、
①複雑な案件や長期間の審理を要するものは不向き。
②審判に異議申し立てをされたら、もう一度訴訟で争わなくてならない。
③そもそも労働者が本人申し立てをするのが困難な場合がある。
次回は、不当解雇された場合の労働審判の事例を解説します。