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2019.07.11
今回は、厚生年金の特例についてのお話です。皆さんは、長期加入者の特例をご存知でしょうか? 例えば、高校卒業後すぐに就職し、そのまま勤務を継続し62歳になれば、44年勤続になります。この時退職し、ちょうど年金をもらうタイミングであれば、厚生年金の報酬比例部分と定額部分をもらうことができます。この時、生計を維持する配偶者がいれば、加給年金も同時に受給できます。生年月日でいうと、男性が昭和30年4月2日から昭和32年4月1日まで、女性が昭和35年4月2日から昭和37年4月1日までの方となります。
上記の例は、ちょうどうまくタイミングがあう例ですが、そうで無い場合でも、男性では、昭和24年4月2日から昭和36年4月1日まで、女性では、昭和29年4月2日から昭和41年4月1日までの方であれば、長期加入者特例に該当する可能性があります。
別の事例で説明します。昭和32年3月10日生まれの男性。19歳から会社に就職。この場合、62歳で厚生年金の報酬比例部分の受給権が発生します。ただ、この時点では、44年の加入期間はありません。その後、63歳になって44年の加入期間に到達し、退職。その時に生計を維持する3歳年下の妻(厚生年金加入期間は240月未満とし、その後も240月に到達しないものとします。)がいる場合は、従来の報酬比例部分に加えて、定額部分と加給年金を受給することができます。定額部分は、65歳になるまで、加給年金は、妻が65歳になるまでもらうことができます。
長期間の会社勤務のある方には、朗報ですが、気をつけなければならない点があります。
以下の点に留意してください。
(1)被保険者資格を喪失していること
つまり、完全に退職するか、週労働時間が20時間未満のパート勤務でないとこの特例はうけられません。
なお、被保険者資格喪失後1ケ月後に日本年金機構で改定作業が行われ、受給者から特別の請求がなくても
定額部分が付加されることになります。日本年金機構から年金改定通知書が送られてきます。
(2)加給年金を受給するためには、以下の要件を満たすこと
●配偶者の厚生年金加入期間は、240月未満であること。240月以上になった時点で加給年金は停止されます。
●配偶者の年齢は、65歳未満であること。65歳になった時点で加給年金は停止となります。
●配偶者が障害厚生年金・障害基礎年金を受給できるときは、加給年金は支給されません。
●配偶者は生計同一(住民票の住所が同じ)かつ、年収が850万円未満であること。
上記の例では、受給権者が62歳時点で判断します。但し、受給権発生後に婚姻した場合は、63歳時点で判断します。
★配偶者が老齢基礎年金を繰上げ受給していたとしても加給年金は受給できます。
★加給年金は、自動では付与されませんので、別途、届けを年金事務所に提出する必要があります。
— 受給権発生時に配偶者の生計維持の申し立てを行った方
➡「老齢厚生年金 加給年金額加給開始事由該当届(生計維持書)」
— 受給権発生後に婚姻された方
➡「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」(様式第229号)
いかがでしょうか? ここで、定額部分の金額ですが、老齢基礎年金の満額とほぼ同額になります。すなわち、約78万円/年(6.5万円/月)となります。配偶者加給年金は、約39万円/年(3.25万円/月)。両方合わせると、月あたり9.75万円になります。
もし会社を退職しないで、給料の手取りが10万円以上であれば、その方がトータルの生活費は、退職しないで働いた方が多くなります。そのあたりのバランスをよく考えて実行しましょう。
以上、この長期加入者特例は、65歳にもらえる年金額とほぼ同等の金額がもらえるおいしい制度になっています。ご自分の人生設計を考えてぜひ検討してみてください。