労働基準監督署の臨検(立ち入り検査)が行われる基準とは?|浜松の社労士事務所

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コラム

労働基準監督署の臨検(立ち入り検査)が行われる基準とは?

2020.02.10

今日のテーマは、労働基準監督署の臨検です。どういう場合に労基署の臨検(立ち入り検査)が行われるのか? その内容はどんなものか?ということを考えていきます。

労働基準監督署は、労働基準法、労働安全衛生法などの労働関係諸法令に基づき、労働者の労働条件(長時間労働、賃金未払いなど)や職場の環境、機械設備の状況など、労働安全衛生上の問題がないかを、原則として予告なく立ち入り検査(臨検)を行います。

◆それでは、何を契機として、特定の事業場に臨検に入るのでしょうか?

(1)労働者からの申告があった場合

一つは、労働者からの申告で、「うちの会社は、残業代を支払ってくれない。」などのクレームが労基署に持ち込まれます。そこで、労働基準法違反が疑われる場合は、立ち入り検査に入り、改善指導や是正勧告を行います。ここで改善が行われればいいのですが、指導しても是正されない場合は、送検などの措置になることもあります。

労働者にとっては、労基署の立ち入りが入って、労働条件、例えば残業代の未払いが解消されれば目的が達成されたことになるのですが、もし、解決されない場合は、労働審判や裁判に訴えることもあり得ます。ですので、経営者として、労働時間管理や就業規則、36協定などをしっかりと整備しておくことが大切です。

 

(2)比較的大きな労災事故が発生した場合

二番目として、労働災害が起こった場合に、特に4日以上の休業災害が起こった場合、その原因は何か、現場の安全管理体制はしっかり整備されているか、法令違反はないかを調査するため、臨検を行います。労災が起こると言うことは、事業所に何らかの問題があり、ほとんどの場合法令違反があるようです。そこで、災害の原因調査と再発防止策の指導、法令違反の是正指導などを行います。

もし死亡事故のような重大な労災事故が起こった場合には、直ちに司法捜査に入ります。もうこの状況では、是正改善を求める段階ではないためです。このような企業は、公表され、人材採用にも大きな影響があると思います。

 

(3)臨検計画に基づき、法違反の可能性が高い業種、労災事故が起こりやすい業種等を中心に行う

上記の2つの場合以外に、定期的に行う臨検は、以下のような業種をターゲットにして行うようです。

●36協定及び自己点検票を見て、長時間労働の恐れの高い業種、具体的には月80時間超は全件調査対象です。

●業界の構造や指導実績などから、労働問題が発生していると考えられる業種(技能実習生受け入れ企業など)

●労働問題がマスコミで報じられている業種(派遣元企業、大量解雇企業など)

●労働問題が生じ、それを放置すると、社会的な影響が大きい会社(例:電通など)

●過労死防止の観点から見て、以下の過重労働の起こりやすい重点業種

トラック運転者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設、メディア業界など

 

それでは、次に、労働基準監督官は、事業場のどんなところを調査するのでしょう?

労働基準監督官は、労働関係諸法令のうち、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などについて、「長時間労働に関し法令違反はないか、残業代の未払いなどがないか」などの労働条件の確保、「健康診断が行われているか、職場環境がしっかり整備されているか」などの安全衛生の確保を中心に臨検を行います。

具体的には、会社の事業内容から組織図、労働者名簿、賃金台帳、就業規則、タイムカード、IDカード、年休管理簿、日報、残業申請書や残業報告書、シフト表、労働条件通知書、36協定届、健康診断個人票、労働者死傷病報告書などの提出を求められチェックされます。

常時50人以上の事業場では、更に、安全管理者、衛星管理者、産業医等の選任報告書、衛生管理者の巡視記録、安全衛生委員会の議事録、健康診断結果報告書、ストレスチェック実施報告書も追加で調査されます。

 

実際にどういった点を指摘されるのでしょうか?

①労働条件通知書を交付していない。また、その通知書がある場合でも、必要な項目が記載されていない。
②24条協定を締結せずに労働組合費や社宅費などを賃金から控除している。
賃金締切日を超えて休日振替を行っている。
④36協定の作成、届け出を行っていない。
⑤1年単位の変形労働時間制の協定届の作成、届け出を行っていない。
振替休日により週1日の休日が確保されていない。
⑦朝礼、体操、着替え、清掃の時間が労働時間に含まれていない。
⑧賃金計算の時間数が実働時間よりも短い。
⑨割増賃金の単価が不足している。
同一週内以外の振替休日で時間外手当(25%部分)を支払っていない。
⑪固定残業代を超える時間外労働に対して割増賃金を支払っていない。
⑫自己申告とパソコンの使用記録に矛盾がある。
⑬タイムカードの打刻とパソコンの使用記録に矛盾がある。
⑭1日の労働時間に対して30分未満の端数を切り捨てている。
⑮権限や待遇が管理監督者として認められない。
⑯管理監督者に深夜手当を支払っていない。

上記のような点が実際の臨検の場面では指摘されているようです。

今後、労働関係諸法令に改正により、指摘されそうな事項とは?

働き方改革関連法の成立により、労働基準法や労働安全衛生法などが改正されており、主に以下の点に注意が必要です。

時間外労働の罰則付き上限規制
36協定の締結に関する規則では、原則 月45時間、年360時間以内(休日労働は含まない)となり、
特別条項付きでは、①月100時間未満(休日労働含む)、年720時間以内 ②月45時間を超える回数は年6回まで
③健康及び福祉を確保するための措置が必要。

年次有給休暇の取得義務化
 年10日以上の有給休暇を付与される労働者に対して、5日取得させる義務が使用者にあり、これには、罰則があります。

労働時間の適正把握義務化
罰則はないが、タイムカードやパソコンの記録等による客観的な方法による労働時間の把握義務が使用者にあります。

いかがでしょうか? 参考になれば幸いです。

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