アルコール依存症は障害年金の対象として認められるか?|浜松の社労士事務所

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コラム

アルコール依存症は障害年金の対象として認められるか?

2021.01.16

本日は、アルコール依存症は、障害年金の対象として認められるか? という論点で話しを進めていきます。

まず、障害年金の認定基準を見ていきます。

第8節 精神の障害 の2認定要領 B「症状性を含む器質性精神障害」では、以下のようになっています。

「(1)症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものである。」とし、「なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(以下『精神作用物質使用による精神障害』という。)についてもこの項に含める。」としています。

更に、この『精神作用物質使用による精神障害については、

ア アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象にならない。

イ 精神作用物質使用による精神障害は、その原因に留意し、発病時から療養及び症状の経過を十分考慮する。

となっています。

従って、単純な多量の飲酒による急性アルコール中毒や、幻聴、幻覚、体の震えなどの身体症状がない場合は、認定の対象外となります。

もう一つの論点として、「給付制限」の問題があります。

国民年金法第70条及び厚生年金保険法第73条の2では、「故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害もしくはその原因となった事故を生じさせ、又は傷害の程度を増進させた者の当該障害については、これを支給事由とする給付は、その全部又は一部を行わないことができる。」としています。

とすると、止めようと思えば止められる飲酒をあえて続けて、精神に障害を負わせたという形になれば、そのような者にまで、障害年金を支給して生活保障する必要はないということになります。

 

例えば、先発の傷病が「アルコール依存症」で、後発の傷病が「うつ病」だった場合、多量のアルコール摂取が原因でうつ病になった場合は、上記の給付制限に該当し、アルコール依存症を初診日、うつ病を障害認定日とする障害年金は、認められないことになります。

しかし、逆に、抑うつ状態が初診日であり、その後に、それを緩和するためにアルコール依存症を併発した場合は、傷病名がうつ病で障害年金が認められることになります。

「アルコール依存症」という傷病名で障害年金が認められることは、非常に難しく、アルコール摂取が原因で障害年金が認められるには、①傷病名が「アルコール性気分障害」「アルコール性認知障害」「ウエルニケコルサコフ症候群」などで、かつ身体症状(幻聴、幻覚、体の震え等)があり、アルコール依存に至った経緯が合理的説明できる場合(例:DV、失業、離婚など)に限られます。

平成14年6月28日の裁決事例では、アルコール依存症で障害年金が認められているようです。但しこの事例は、アルコール性認知障害による認定です。

ご参考まで。

 

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