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2021.02.09
今日は、新聞記事の紹介をします。なんと、振替加算の未払いがあるとして、7人が東京地裁に訴訟を起こしたが、その判決を待たずに国側が全額を支給していたことが判明したとのこと。原因は、日本年金機構側の確認不足と思われます。
以下、2021年2月8日の朝日新聞デジタルから記事を引用します。
「厚生労働省は、2017年、事務処理ミスなどで、公的年金の支給漏れが見つかったと発表。年金加入者の配偶者が65歳になると年金額に上乗せされる『振替加算』が約10万人に対し総額約598億円の未払いだったとした。
一方、これとは別に約45,000人については、未払い対象ではないとも公表した。年金加入者との同居などを示す【生計維持関係】がないとの申告があったため、支給要件を満たさないというのが理由だった。申告に誤りがあると申し出ても、時効を適用して過去5年分しか払わないとした。
だが、このうち79~87歳の7人が2019~2020年、支給要件を満たすとして、「振替加算」の全額払いなどを求めて東京地裁にそれぞれ提訴。「生計維持関係がないとの申告をそもそもしていない。国が勝手にないと判断した。」と訴えた。
国側は請求棄却を求めたが、突如、原告の主張を受け入れる形で「再度精査したところ、生計維持関係があると申し立てた可能性がある」と説明。判断を一転させた詳しい理由は、述べないまま、判決が出る前に7人に対し、時効にかかるとして支給していなかった全額(計約990万円(一人あたり約85万円~約264万円)を支払った。」(引用はここまで)
この記事を読む限り、日本年金機構側の不備というか、確認不足が見てとれます。
それでは、この「振替加算」とは何でしょうか?
この振替加算については、2019年2月2日付けブログにて、「いきなり振替加算」について、2019年7月26日付けブログにて「夫の老齢年金繰り下げと妻の振替加算」について記事を書いていますので、そちらも参照してください。以下の記述では、夫が働き妻が専業主婦のある場合で説明しています。逆のパターンもありますが、その場合は、夫と妻を逆にして考えてください。
「振替加算」とは、夫の加給年金額の一定割合を妻の老齢基礎年金に振り替えて加算する制度です。
この振替加算は、昭和41年4月2日以降生まれの妻には支給されません。これは、昭和61年4月1日の新法施行日に20歳以上になる妻(専業主婦)は、第3号被保険者(強制被保険者)になり老齢基礎年金が相対的に低額になる可能性が低いからです。
夫が年上の場合、65歳になると、老齢厚生年金に配偶者加給年金が加算される場合があります。この加給年金は、妻が65歳になると打ち切られますが、その代わりとして、妻の老齢基礎年金に一定額を加算します。これを「振替加算」と言っています。
振替加算がもらえる要件は以下の通りです。
夫の要件:
A )240月以上の老齢厚生年金(退職共済年金なども含む)の受給権者である。
又は
B) 1級又は2級の障害厚生年金(障害共済年金などを含む)の受給権者である。
妻の要件:
①大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた老齢基礎年金の受給権者であること。
②65歳に達した日において、「夫の要件:A又はBである夫」によって生計を維持していたこと(同居かつ年収が850万円未満)
③65歳に達した日の前日において、「夫の要件:A又はBである夫」の加給年金額の計算の基礎となっていたこと。
④厚生年金の加入期間が240月未満であること。
そして、振替加算の時期としては、妻が65歳に達した日に属する月の翌月から行います。
以下にその具体例を示します。
次に妻が年上の場合はどうでしょうか?
夫の要件は、上記と同じです。
妻の要件は、②と③については、「夫が65歳に達した日において、~ (略)」「夫が65歳に達した日に前日において~(略)」となり、夫の65歳時で判断します。そして、振替加算の時期は、夫が65歳に達した日の属する月の翌月からとなります。
以下にその具体例を示します。
なお、振替加算額は、妻の生年月日により決定し、年齢が若いほど低額になります。令和2年度のデータは以下の通りです。
参考としてください。
今回の新聞記事から推測すると、この振替加算を受けられるのに受給していない方が多数いらっしゃると思われます。
自分は老齢基礎年金だけで、振替加算がついていない方は、ぜひ年金事務所へ相談してみては如何でしょうか?