同一労働同一賃金対応で、中小企業経営者がなすべき対策とは? 就業規則の見直しや賃金規程などの改定|浜松の社労士事務所

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同一労働同一賃金対応で、中小企業経営者がなすべき対策とは? 就業規則の見直しや賃金規程などの改定

2021.03.06

今日のテーマは、中小企業に対して、2021年4月1日から施行が予定されている「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、略して「パートタイム・有期雇用労働法」という。)のポイントと中小企業主が取り組むべき課題について述べていきます。

この法律の対象となる労働者とは、「パートタイム労働者」(略してパート社員)と「有期雇用労働者」(略して有期社員)の2つの類型になりますが、その定義は、どうでしょうか? いわゆる《非正規労働者》のことです。

パートタイム労働者】➡1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者を言います。正社員が週40時間勤務の場合、40時間未満のの労働者は、パートタイム労働者となります。

有期雇用労働者】➡事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者を言います。例えば、雇用契約書に雇用期間が1年間とか6ケ月と規定されており、雇用期間が到来したら更新するか終了するかになります。

通常の労働者】➡「正社員」及び「事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者」を言います。

それでは、この法律の肝である、第8条(不合理な待遇の禁止)を見てきましょう。以下引用です。

「事業主は、雇用するパートタイム・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、その待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、パートタイム・有期雇用労働者と通常の労働者の『職務の内容』、『職務の内容・配置の変更の範囲』(人材活用の仕組むや運用など)、『その他の事情』のうち、その待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」

ここで、『その他の事情』とは、職務の成果、能力、経験、事業主と労働組合との交渉の経緯などを言います。

上記の条文は、いわゆる『均衡待遇』と呼ばれるものです。正社員と非正規社員の間に待遇差があってもよいが、それが不合理なものであってはならないというものです。例えば、正社員には、賞与を与えるが、非正規社員には与えていない場合は不合理とされるため、一定の差はあってよいが、与えなければならないとされます。

今度は、第9条(差別的取り扱いの禁止)を見ていきます。以下引用です。

「事業主は、職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組みや運用など)が通常の労働者と同一のパートタイム・有期雇用労働者については、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取り扱いをしてはならない。」

これは、『均等待遇』と呼ばれ、就業の実態が同じであれば、賃金、教育訓練、福利厚生、解雇などすべての待遇について、基本的に同じものにしなければならないとするものです。例えば、通勤手当のようなものは、同じにする必要があります。

それから、もう一つ重要なのが、事業主の説明義務です。

第14条(事業主が講ずべき措置の内容等の説明) 以下引用です。

「1 事業主は、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、実施する雇用管理の改善に関する措置の内容を説明しなければならない。

2 事業主は、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者から求めがあったときは、通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由と待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明しなければならない。

3 事業主は、パートタイム・有期雇用労働者が2の求めをしたことを理由として、そのパートタイム・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」

つまり、非正規労働者が待遇差について説明を求めてきたときは、その根拠を説明できなければならないということです。単に「パートだから」とか「将来の役割期待が異なるから」などという主観的抽象的な説明ではいけません。職務の内容、配置の変更の範囲など、より具体的に説明する必要があります。

この法律に対応するための資料として、厚生労働省から「同一労働同一賃金ガイドライン」が出ております。
詳細は、以下のURLを参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

それでは、具体的に見ていきましょう。

(1)基本給
基本給の支給基準は就業規則に明示すべきですので、まだ記載のない場合は、至急改定しましょう。通常は、能力又は経験に応じてとか、業績又は成果に応じて、勤続年数に応じてなど、いろいろな基準が考えされますが、同一であれば同一の支給を、一定の違いがあればその相違に応じた支給を行います。賃金規程を改定し、正規と非正規労働者との規定の違いを明確にしておきましょう。非正規労働者から説明を求められた場合は、しっかり根拠を示せるようにしてください。

(2)役職手当など
役職の内容に対して支給するものについては、正社員と同一の役職に就く非正規労働者については、同一の支給をしなければなりません。また、役職の内容に一定の違いがある場合は、その相違に応じた支給をしなければなりません。 役職手当以外のものとしては、特殊作業手当、特殊勤務手当、精皆勤手当なども同様に考えます。

(3)通勤手当
非正規労働者に対しては、正社員と同一の支給をしなければなりません。

(4)賞与
会社の業績等への貢献に応じて支給するものについては、正社員と同一の貢献である非正規社員には、貢献に応じた部分につき同一の支給をしなければなりません。また、貢献に一定の違いがある場合は、その相違に応じた支給をすることになります。

(5)時間外手当など
正社員と同一の時間外、休日、深夜労働を行った場合は、同一の割増賃金を支給しなければなりません。

(6)家族手当、住宅手当など
ガイドラインには示されていませんが、個別具体的に労使で議論して決定することになります。

まとめると、各種手当の趣旨目的を明確にし、正社員と非正規社員の職務の内容、責任の範囲、変更の範囲、その他の事情を考慮し、不合理な待遇差にならないように、就業規則の見直し、賃金規程の改定、退職金規定の改定などを行い、法令に即した内容にしていくことが求められます。

以下に非正規労働者に対して説明する内容についての事例をご紹介します。

(1)基本給
基本給については、正社員は、現時点での職務遂行能力、スキル、資格の有無だけでなく、今後長期間にわたり勤務していただくことを前提に、これらの能力の維持向上、その能力発揮により会社に貢献していただくことへの期待、今後の昇給、昇格があり得ることの兼ね合いで決定しています。一方、有期契約社員については、現時点での職務遂行能力、スキル、資格を前提に、定められた期間においてその能力を発揮して頂くことを前提に決定させて頂きいています。そのように考慮要素が違うために、単純に金額だけで比較できません。

(2)賞与
賞与は、会社業績、個人の能力、勤務態度、功労報酬、生活費の補助、算定期間における労務の対価の後払い的性格、長期間勤務して頂くことへの意欲の維持や有能な人材の確保など、多様な趣旨を含んでいます。
有期契約社員については、契約期間が決まっており、限られた期間にその能力を発揮して頂くことが求められており、上記のような正社員に求められている趣旨などが合致せず、また当社の経営状況を踏まえると、賞与をお支払いすることができないことをご理解ください。なお、当社においては、正社員登用制度を設けており、今後も長期に勤務して頂ける道は用意しています。

(3)住宅手当
住宅手当は、転勤など住居の変更を伴う異動により生ずる費用の増加を補填する目的で支給するものです。かかる異動は正社員のみに予定されており、契約社員の皆様にはこのような異動は予定されていません。このように配置の範囲に違いがあることに基づくものであることをご理解ください。

(4)家族手当
家族手当は、当社で長期間にわたり勤務して頂く中で、結婚、出産、子育て、介護など、あらゆる家族構成に関する変化が生じても、安心して当社で勤務して頂けるように生活の補助として支給するものです。有期契約社員については、確かに家族構成に応じた出費は当然あるかと思いますが、限られた期間内での家族構成の変化は正社員と比べても多くないと思いますので、当社の経営状況も踏まえると、そこまで配慮しかねますことをご理解頂きたい。

(5)退職金
退職金は、長期間にわたり当社での勤務に貢献して頂いたことへの功労報酬、正社員の多様な職務範囲に対する後払い的な性格、又は長期間にわたる継続勤務に対する意欲の向上、有能な人材の確保定着など、様々な趣旨を含んで支給するものです。有期雇用社員については、限られた期間にそのパーフォーマンスを発揮していただくことをお願いしており、長期雇用の前提とした上記の趣旨が及ばないことをご理解ください。なお、当社では正社員登用制度を設けており、長期的に勤務して頂ける道は用意しております。

 

以上、参考としてください。

 

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