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2021.05.24
今日のテーマは、キャリアアップ助成金です。中小企業が最も取り組みやすい助成金の代表例になります。
これは、従業員の待遇を改善したら、国からお金がもらえますよ、という話です。総務省の労働力調査では、2021年3月現在、正社員が3560万人、非正規社員が2054万人と、非正規の割合が36.6%となっています。政府としては、非正規の比率を減らして正社員を増やしたい。そこで、厚生労働省は、非正規社員を正規社員にするなどして、従業員の待遇を改善した場合には、ご褒美として助成金を出します、という政策を継続しています。この助成金は、融資ではないため、返還の必要はありません。
例えば、有期社員を正規社員に転換すると57万円の助成金を獲得できます。もしこれと同じ利益を出そうとすれば、売り上げ高は10倍以上の金額が必要になります。中小企業にとって助成金が如何に大きいかが分かっていただけると思います。
それでは、具体的にキャリアアップ助成金を見ていきましょう!
◆支給対象となる企業の要件:
①雇用保険の適用事業所であり、労働保険の未納がないこと
②キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局の認定を受けていること
③5年以内に助成金の不正受給をしていないこと
④過去1年間に労働法関連法令の違反を行っていないことなど
があります。以上が主な要件ですが、他の細かな要件については、厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」を参照してください。
◆キャリアアップ助成金の概要:
ここでは正社員化コースのみ記載します。他のコースは、上記厚生労働省のパンフレットを参照ください。
①有期社員➡正規社員: 一人あたり 57万円(72万円)
②有期社員➡無期社員: 一人あたり 28万5000円(36万円)
③無期社員➡正規社員: 一人あたり 28万5000円(36万円)
( )内の数字は、生産性の向上が認められた場合です。生産性の要件についても上記パンフレットを参照してください。
ここで、用語の定義をしておきます。
「有期社員」とは、「期間のの定めのある労働契約を締結している社員」をいいます。
「無期社員」とは、「期間の定めのない労働契約を締結している社員のうち、正規社員以外の者」をいいます。
「正規社員」とは、「期間の定めのない労働契約を締結し、派遣社員ではなく、勤務地や職務が限定されていない社員」をいいます。
◆対象となる労働者の要件
正社員化コースのみ解説します。その他のコースについては、上記パンフレットを参照してください。
①有期社員➡正規社員:事業主に雇用された期間が通算して6ケ月以上3年以内の有期雇用労働者であること
②有期社員➡無期社員:事業主に雇用された期間が通算して6ケ月以上3年以下の有期雇用労働者であること
③無期社員➡正規社員:事業主に無期雇用労働者として雇用された期間が6ケ月以上の無期雇用労働者であること
◆支給申請するまでにすべきこと:
●事業主は、有期から正規などに転換することについて、就業規則を改定していること
●転換後6ケ月間の賃金を転換前6ケ月間の賃金の3%以上増額させていること
(注)賃金は、基本給や定額支給手当を含むものとし、実費弁償的なものや毎月変動するもの、賞与は含めない。
●雇用保険被保険者を解雇等をしていないこと など
◆提出書類:
①支給申請書(様式第3号、別添様式1-1、別添様式1-2)
②支給要件確認申立て書
③キャリアアップ計画書(写し)
④就業規則(転換制度が記載されたもの)
⑤労働条件通知書など
⑥賃金台帳及び「賃金3%以上増額に係る計算書(賃金上昇要件確認ツール)」
⑦出勤簿
⑧登記事項証明書
◆申請時期:
転換した社員に対し、無期雇用又は正規雇用した賃金6ケ月分支給した日の翌日から2ケ月以内に申請する
◆手続きの流れ
(1)キャリアアップ計画書の作成・提出
●「キャリアアップ管理者」を選定し、労働組合(過半数労働者)の意見を聴いて「キャリアアップ計画書」を作成し、管轄の労働局長の認定を受ける
(2)就業規則等に転換制度を規定
●就業規則等に、試験等の手続き、対象者の要件、転換の実施時期を規定する
●労働基準監督署に改定後の就業規則を届出る
(3)転換に際し、就業規則等に規定した試験等を実施
(4)正規雇用等への転換の実施
●転換後の労働条件通知書等を対象労働者に交付する
●転換後に適用される就業規則等に規定している労働条件や待遇にする
(賃金が3%以上増額している必要あり)
(5)転換後、6ケ月分の賃金を支給➡支給申請
●転換後6ケ月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2ケ月以内に支給申請する
(6)審査、支給決定
如何でしょうか?
キャリアアップ助成金には、正社員化コースの他に、
賃金規定等改定コース
賃金規定等共通化コース
諸手当制度等共通化コース
選択的適用拡大導入時処遇改善コース
短時間労働者労働時間延長コース
があります。
また、「有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」もパンフレットに掲載されています。
申請を考える際には、参考にしてください。